日本語教師資格の国家資格化が本格始動
2020年2月14日、ついに「日本語教師資格の国家資格化」が本格的に始動しました。
2018年末より、文化庁を中心に、文化審議会国語分科会日本語教育小委員会にて何度も話し合いが行われて来ましたが、この度大枠が決定しました。
メディアでの報道は以下のようなものです。
国の文化審議会の小委員会は14日、外国人らに日本語を教えるための新たな国家資格「公認日本語教師(仮称)」を創設する報告書案の大枠を了承した。国家資格創設で日本語教師の専門性を高めるとともに、雇用安定や人材確保を図る狙い。判定試験合格や教育実習履修などが要件で、文化庁が詳細を検討し、2020年度以降の関連法成立を目指す。
報告書案は資格の要件として、日本語教育能力の判定試験への合格▽45コマ以上の教育実習▽学士(大卒)以上――を定めた。国籍は問わない。国の指定機関から証明書を発行し、資格の更新期間は10年程度と見込んでいる。
教育の対象は、外国人労働者やその家族、日本語指導が必要な児童生徒、留学生、難民、海外に在住して日本語を学んでいる人ら。教育実習は外国人が在籍する民間企業や日本語学校、小中学校などで行うと想定している。
現在、日本語教師をしている人に関しては、国家資格への移行までに「十分な期間を設ける」とした。現段階で大卒でない人も、短大や高専を卒業し、学校等で2年以上日本語の教育や研究に従事していたなどのケースは経過措置の対象となりうるとした。
-毎日新聞 2020年2月14日 19時03分(最終更新 2月14日 21時55分)-
引用させていただいた文章の中で、特に赤字部分に注目いただきたいと思います。
「2020年度以降の関連法成立を目指す」ということで、制度の施行日に関してはまだ曖昧です。おそらくですが、2021年以降に施行されるのではないでしょうか。
もう1箇所は「経過措置」に関してですが、これはなかなか影響が大きいのではないでしょうか。
現在日本語教師として働いている方や、学校等で2年以上日本語教育や研究に従事していた方が経過措置の対象である、となっています。
ということは、「資格は保有しているけど教師経験がない」方や「現在、日本語教師養成講座で資格取得中」の方などは、経過措置の対象外となってしまうのでしょうか?
日本語教師養成講座スクールの見解
この「経過措置」に対して、具体的な見解を発表されている学校がありましたので、その文章を引用させていただきます。
なお、各メディアの報道では「経過措置」の内容について、一部誤解を招きかねない表現がされていますが、正しくは以下の見解となります。
「公認日本語教師(仮称)」創設時点までに、現行の日本語教師資格を保有している者は経過措置の対象となる。
「公認日本語教師(仮称)」創設後、一定期間(=十分な期間)は、現行の日本語教師資格を保有している者は経過措置の対象となる。つまり、国家資格制度が施行されるまでに、現行の資格取得方法で着手された方々は、経過措置の対象になるということです。
「公認日本語教師(仮称)が制度化されたら、資格を取り直さなければいけないのか」
「現在養成講座を受講しているが、修了したとしても意味がなくなってしまうのか」2019年以降、このようなお声を頂戴することが増えましたが、回答としましては上記の通りであり、とりわけ養成講座の修了が意味を成さなくなるということはありません。
-東京中央日本語学院(TCJ) 「日本語教師資格の国家資格化」-
※詳細は東京中央日本語学院(TCJ)の該当ページを確認してください。
「国家資格制度が施行されるまでに、現行の資格取得方法で着手された方々は、経過措置の対象になる」ということのようです。
念の為に、「現行の資格取得方法」を記載しておきます。
- 日本語教師養成講座420時間カリキュラムを修了(学士以上の学位が必要)
- 日本語教育能力検定に合格する(通称「検定試験」に合格する)
- 大学や大学院の日本語教育学科を専攻又は副専攻して修了する
繰り返しとなりますが、このいずれかの方法で、国家資格制度が施行されるまでに資格を取得するか又は着手しておけば、経過措置の対象になる、ということです。
つまるところ、今のうちに上記いずれかの方法で資格取得を目指してしまった方が得策、と言っても良いのかもしれません。
「公認日本語教師(仮称)」制度創設(国家資格化)のその後
さて、2021年頃に新資格「公認日本語教師(仮称)」制度が創設されたとして(あくまで推測です)、その後、日本語教師はどのように変わっていくのでしょうか?
「国家試験に合格しないと資格が取れない」となると、その難易度に待遇も比例して来るように感じます。しかし、1年ほどで急激に待遇が良くなるとも思えません。
政府の狙いは、減少する日本の労働力人口を、急増している在留外国人で埋め合わせるため、外国人の方々が日本でしっかりと仕事をしながら生活していけるよう、一定以上の日本語力(及び慣習やマナーの習得)を指導できる、高いスキルを持った日本語教師を輩出する、ということです(申し訳ありません、無理矢理一文で繋ぎました)。
この高いスキルを持った日本語教師を輩出するには、日本語教師の待遇や地位の向上が必要であるため、国家資格化に踏み切ったということです。
しかし、現在の日本語教師の主な就職先である多くの日本語学校は、果たして「儲かって」いるでしょうか?
もし「儲かって」いないと仮定すると、この構造を根本から見直さなければ、このサイクルを改善していくことは難しいのではないでしょうか。
個人的に期待したい打開策としては、国家資格化により、一般企業が日本語教師に注目し始め、日本語教育界に投資してくれるスポンサーが大量に増えるというシナリオです。
日本語教育界にお金が投じられ始めれば、日本語教育を取り巻く未来は大きく変わるでしょう。
そしてその際に重要になることは、日本語教師として高いスキルを保有しているかどうかです。
教師である以上、活躍するためには結局のところ高い教育スキルが必要であり、そこから目を背けるわけには行きません。
ここから、これまでの予測とは異なる日本語教育の未来が近づいてくることは間違いないでしょう。その時になって遅れを取らないように、今から教育スキルを高めておいて損はないと思います。