はじめに
日本語教育能力検定試験は毎年1回、10月の最終日曜日に行われます。出題傾向や自分の現在の実力を測り、合格から逆算してどういった点が勉強不足かを把握する意味でも、過去問のチェックはとても大切です。
日本語教育能力検定試験合格を目指す方にとって必要不可欠となる過去問について、どんな過去問があったか、あるいはその活用の仕方などをご紹介していきます。
日本語教育能力検定試験対策の始め方
例えば、大学の2次試験を思い浮かべて下さい。それぞれの大学ごとに出題傾向が異なり、いい意味でも悪い意味でも難関大学の試験には大抵「クセ」のようなものがあります。
大学入試は、1科目でもその出題範囲はかなり広くなりますから、過去問という資料なしにすべてを網羅することはほぼ不可能です。過去に出た問題を紐解き、ポイントとなる出題傾向をうまくとらえて勉強していかなければ、効率的に加点できません。
日本語教育能力検定試験も同様に、言語だけでなく、社会や歴史など様々な要素を含んだ広い範囲から出題されます。それだけに過去問を解き、頻出分野、出題方法、誤った選択肢の言い回しの傾向などのクセを把握し、対策を練っておくことが大事になってきます。
加えて日本語教育能力検定試験の場合、聴解問題が出題されます。これは言語学習の音声的特徴に関する知識や瞬間的知覚・判断能力を測定する問題です。配点は40点と試験Iと試験IIIに比べ少ないのですが、失点はなるべく避けなければなりません。
過去問の活用
日本語教育能力検定試験の過去問題は、凡人社から発売されています。
このほか、平成26~30年度版と直近6年の過去問が発売されていて、試験対策に役立てることができます。少なくとも1冊は購入し、最初から最後まで解いていきましょう。
ただ、あまり勉強もしないうちに過去問を購入してすぐに解こうとするのはお勧めできません。なぜかというと、知識が十分でない状態では簡単に解けるものではなく、その難しさに辟易してしまうかもしれないからです。まずは、こんな問題が出る、程度の認識を得られるようにぱらぱらと目を通すだけで良いでしょう。独学で試験対策を行う方はモチベーションの維持がカギになるので、詰め込み過ぎて嫌にならないように、最初のうちは浅く広く、出題範囲をまんべんなく学習していきます。
過去問題(筆記試験)は、下記のような使い方ができるとより活用できます。
- 試験対策を始める前にすべてのページを一通り見て、学習すべき範囲を認識しておく
- 問題集などを解きながら、試験対策を行う過程で継続的に過去問を解き、知識を効果的に定着させていく
- 記述式試験は模範解答の書き写しからスタートし、徐々に自分の言葉で論述できるようにしていく
- ある程度実力がついた段階で過去問を一通り解き、時間配分等をみながら試験問題に慣れていく
実際の過去問にトライ!
聴解試験にも過去問があります。先ほど紹介した凡人社の過去問題集にはCDが1枚ついていて、それに聴解試験の過去問が収録してあります。
聴解試験でポイントとなるのはそのスピードです。CDから流れてくる音声が速く感じるため、まずはこれに慣れなくてはいけません。スピードに慣れていないと試験内容を聞き漏らすことにもつながりかねず、うまく加点できません。
出題される問題は、日本語のアクセントや、発音の正しさをテストするもの。例えば日本語学習者が間違った発音で日本語を話す音声が流れ、発音状態を表現した4つの咽頭イラストのうち、誤った発音をしている舌の位置はどれか当てさせるという問題や、ある単語を日本語学習者が発音している音声から、どのようなアクセントで発音されたものかを4つの選択肢のなかから解答する問題などが出題されます。
では最後に、実際の過去問を少し覗いてみましょう。
試験Iで過去出題された問題
まずは試験Iに出題された問題を見てみます。
【 】内に示した観点から見て、他と性質の異なるものを、それぞれの1~5の中から一つずつ選べ。
(1) 【直示】
- 翌日
- 今週
- 先月
- 来週
- おととい
(2) 【動詞の自他】
- 壊す
- 塞ぐ
- 上げる
- 落とす
- 閉じる
試験IIIで過去出題された問題
続いては試験IIIの問題です。
日本語の作文のコース修了後に、教師が学習者にインタビューを行った。次に示すのは、コースに対する学習者のコメントである。コメントを読み、下の問い(問1~5)に答えよ。
この授業を受けてから、A〔日本語の文章を書いている間に色々アイデアが出て、それを書いて、プリントアウトしてからまた書き加えて〕、という作業を意識的にやるようになった。授業で目本語の文章を書くときの手順を覚えて、B〔中国語の文章を書くときも同じような手順でしたら、私にとってはすごく書きやすかった。〕
C〔クラスメイトと作文を交換して読んで評価する〕というのは、時間の無駄だったと思います。やっぱり私はD〔先生に読んでもらって間違えた部分を直してもらわないと上手にならない〕と思うんです。だから、この教室活動はあまり積極的にやらなかったと思います。
試験のときは、「起承転結」で書こうと思ったんです。「転」の部分がうまく思いつかなかったので、変な構成になるより、E〔「起承結」で書いたほうが安全だと思ってこの構成で書きました。〕
問1. 文章中のA〔 〕のような作文指導の方法を何と呼ぶか。最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- 修辞的アプローチ
- ジャーナル・アプローチ
- パラグラフ・パターン・アプローチ
- プロセス・ライティング・アプローチ
問2. 文章中のB〔 〕のような効果を何と呼ぶか。最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- 干渉
- 受容
- 転移
- 般化
問3. 文章中のC〔 〕のような活動を何と呼ぶか。最も適当なものを、次の1~4の中から一つ選べ。
- プロトコル
- オートノミー
- マンツーマン
- ピア・フィードバック
【 正解 】
試験I
(1) 1
(2) 5
試験III
問1 4
問2 3
問3 4
まとめ
日本語教育能力検定試験の合格に必要不可欠である過去問について紹介してきました。過去問をやりこむことで、試験の合格に近づくだけでなく、日々の勉強への集中力が俄然変わってきます。ぜひ過去問を手に入れて、定期的に問題を解いてみて下さい。