目次
はじめに
日本語教育能力検定試験の合格は、日本語教師を目指す方にとって、とても重要なポイントとなってきます。
試験対策は主に3つあります。一つは書籍や参考書を購入し独学で行うもの。もう一つは、日本語教師養成講座のあるスクールに通って検定試験対策の専門講座を受けるもの。最後に、通信教育の試験講座を利用し、テキストに加えて、講師の講義を収録したDVDなどで学習し試験に備える方法です。
日本語教育能力検定試験の特徴
学習方法について考える前に、まずは試験の概要を知ることが大切です。
日本語教育能力検定試験の特徴は以下の4つです。
- 出題範囲が広範
- 理論的な裏付けが必要な問題が半分以上出題される
- 口腔断面図の学習が必須となる音声問題が出題される
- 論述試験対策が必須
試験IIIでは論述問題が出題されます。文章問題と小論文の形式になっているため、論述試験対策が必要です。
出題範囲の中でも「基礎項目」は習熟する
日本語教育能力検定試験の出題範囲は広いですが、その指定された出題範囲の中でも、「基礎項目」部分については優先的に出題されます。よってこの基礎項目の内容を重点的に学習することが、合格へ近づくための第一歩です。
「基礎項目」一覧
※基礎項目は赤字部分です。
区分1:社会・文化・地域
1.世界と日本
- 諸外国・地域と日本
- 日本の社会と文化
2.異文化接触
- 異文化適応・調整
- 人口の移動(移民・難民政策を含む)
- 児童生徒の文化間移動
3.日本語教育の歴史と現状
- 日本語教育史
- 日本語教育と国語教育
- 言語政策
- 日本語の教育哲学
- 日本語及び日本語教育に関する試験
- 日本語教育事情:世界の各地域,日本の各地域
4.日本語教員の資質・能力
社会・文化・地域で特に押さえておきたい基礎項目
- 日本語教育史
区分2:言語と社会
1.言語と社会の関係
- 社会文化能力
- 言語接触・言語管理
- 言語政策
- 各国の教育制度・教育事情
- 社会言語学・言語社会学
2.言語使用と社会
- 言語変種
- 待遇・敬意表現
- 言語・非言語行動
- コミュニケーション学
3.異文化コミュニケーションと社会
- 言語・文化相対主義
- 二言語併用主義(バイリンガリズム(政策))
- 多文化・多言語主義
- アイデンティティ(自己確認,帰属意識)
言語と社会で特に押さえておきたい基礎項目
- 社会言語学・言語社会学
区分3:言語と心理
1.言語理解の過程
- 予測・推測能力
- 談話理解
- 記憶・視点
- 心理言語学・認知言語学
2.言語習得・発達
- 習得過程(第一言語・第二言語)
- 中間言語
- 二言語併用主義(バイリンガリズム)
- ストラテジー(学習方略)
- 学習者タイプ
3.異文化理解と心理
- 社会的技能・技術(スキル)
- 異文化受容・適応
- 日本語教育・学習の情意的側面
- 日本語教育と障害者教育
言語と心理で特に押さえておきたい基礎項目
- 習得過程(第一言語・第二言語)
- ストラテジー(学習方略)
- 異文化間教育・多文化教育
- 異文化受容・適応
区分4:言語と教育
1.言語教育法・実技(実習)
- 実践的知識・能力
- コースデザイン(教育課程編成),カリキュラム編成
- 教授法
- 評価法
- 教育実技(実習)
- 自己点検・授業分析能力
- 誤用分析
- 教材分析・開発
- 教室・言語環境の設定
- 目的・対象別日本語教育法
2.異文化間教育・コミュニケーション教育
- 異文化間教育・多文化教育
- 国際・比較教育
- 国際理解教育
- コミュニケーション教育
- 異文化受容訓練
- 言語間対照
- 学習者の権利
3.言語教育と情報
- データ処理
- メディア/情報技術活用能力(リテラシー)
- 学習支援・促進者(ファシリテータ)の養成
- 教材開発・選択
- 知的所有権問題
- 教育工学
言語と教育で特に押さえておきたい基礎項目
- 教授法
- 評価法
- 教育実技(実習)
- コースデザイン(教育課程編成)、カリキュラム編成
区分5:言語一般
1.言語の構造一般
- 言語の類型
- 世界の諸言語
- 一般言語学・日本語学・対照言語学
- 理論言語学・応用言語学
2.日本語の構造
- 日本語の構造
- 音声・音韻体系
- 形態・語彙体系
- 文法体系
- 意味体系
- 語用論的規範
- 文字と表記
- 日本語史
3.コミュニケーション能力
- 受容・理解能力
- 言語運用能力
- 社会文化能力
- 対人関係能力
- 異文化調整能力
言語一般で特に押さえておきたい基礎項目
- 音声・音韻体系
- 文法体系
- 一般言語学・日本語学・対照言語学
- 形態・語彙体系
- 世界の諸言語
- 語用論的規範
- 文字と表記
こちらで挙げた"特に押さえておきたい基礎項目"については、出題頻度が高いのでしっかりと学習し取りこぼしの無いようにしましょう。
試験日を逆算してスケジューリングを行う
日本語教育能力検定試験は例年10月最終週の日曜日に行われます。この試験日にピークを持ってくることが大切です。個人差はありますが、学習期間の目安は3か月~6か月程度であり、試験対策は遅くとも7月には始める必要が出てきます。まずは基礎項目に手をつけ、全範囲の学習が終わり次第、音声問題対策、そして論述問題対策へと進めていきます。こと試験IIIの論述問題においては時間配分も重要です。小論文に十分な時間を確保できるよう、試験IIIの問題を通しで複数回解くようにし、時間配分の感覚を身に着けておきましょう。
進め方の事例
では例として、7月から学習を進めていく場合のスケジュールを見ていきましょう。
まず7月は、理論全般のテキストを読み進めていきます。市販されているものや、日本語教師養成学校のテキスト、試験対策講座のテキストなどを利用します。試験対策講座を利用して勉強を進めていく場合は、講座ごとにある程度スケジュールが組まれているので、それに沿って勉強していきます。独学の場合、テキストは1日~3日で1冊といったペースで進めていきます。付せんやノートを使いながら重要なポイントを漏らさないようにしましょう。スクールを利用している方は不明点を漏らさずに質問しましょう。
7月後半からは小論文対策に手をつけます。実際に何度も文章を書いていきましょう。どのようなテーマに対してもある程度は形にできるよう繰り返し練習し、それを第三者に添削してもらうことも大切です。8月中に小論文対策を終わらせておけば9月以降の学習に余裕が生まれます。
9月からは音声問題対策をはじめましょう。模擬テストのCDなどを利用しながら、口腔断面図の理解を深めていきます。マークシート試験対策には過去問を活用し、繰り返し解いて暗記できるようになるまで徹底的に学習します。
10月に入ったら、本番を想定した模擬試験を行います。これまでの学習の習熟度を確認しつつ、時間配分についても本番を見据えて取り組みましょう。
まとめ
日本語教育能力検定試験について、出題範囲と対策をご紹介しました。簡単に合格できる試験ではないため、しっかりとした準備、対策が必須となります。独学、通信講座、スクールと試験対策はいくつか選択肢がありますが、自分の生活スタイルと照らし合わせ、最も勉強しやすく効率のよい対策に取り組んでください。