はじめに
日本語教育能力検定試験は、日本語教師を目指す方にとって重要な試験です。試験に合格するために、出題傾向と問題の分析が必要不可欠です。
こちらでは日本語教育能力検定試験の概要を中心にご紹介していきます。
試験概要
まず日本語教育能力検定試験の概要を見ていきましょう。
<日本語教育能力検定試験(令和二年度試験)>
出願期間
令和元年6月22日(月)から
8月 3日(月)まで(当日消印有効)
試験日
年1回(10月第4日曜日)
令和二年10月25日(日)9:00~16:40
受験料
10,800円(税込)
試験内容
●試験I(90分/100点)
原則として、出題範囲の区分ごとの設問により、日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定する。
●試験II(30分/40点)
試験Iで求められる「基礎的な知識」および試験IIIで求められる「基礎的な問題解決能力」について、音声を媒体とした出題形式で測定する。
●試験III(120分/100点)
原則として出題範囲の区分横断的な設問により、熟練した日本語教員の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定する。
試験会場
札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・福岡
合否結果通知の発送
令和元年12月25日(金)予定
試験は年1回のみ、会場も全国の主要都市7か所に限られるので、地方にお住まいの方は、日本語教師養成学校への通学など、学習環境の確保とともに厳しい試験となっています。
試験内容もトータルで240分の長丁場となるため、広範囲にわたる学習が必要です。
日本語教育能力検定試験で試されるもの
検定試験で測定される受験者の能力は、以下の通り明示されています。
求められる能力↓
- 国際関係論・文化論・比較文化論的な視点とそれらに関する基礎的知識
- 政治的・経済的・社会的・地政学的な視点とそれらに関する基礎的知識
- 宗教的・民族的・歴史的な視点とそれらに関する基礎的知識
区分:言語と社会
求められる能力↓
- 言語教育・言語習得について、広く国際社会の動向からみた国や地域間の関係から考える視点とそれらに関する基礎的知識
- 言語教育・言語習得について、それぞれの社会の政治的・経済的・文化的構造等との関係から考える視点とそれらに関する基礎的知識
- 個々人の言語使用を具体的な社会文化状況の中で考える視点とそれらに関する基礎的知識
区分:言語と心理
求められる能力↓
- 学習の過程やスタイルあるいは個人、集団、社会等、多様な視点から捉えた言語の習得と発達に関する基礎的知識
- 言語教育に必要な学習理論、言語理解、認知過程に関する心理学の基礎的知識
- 異文化理解、異文化接触、異文化コミュニケーションに関する基礎的知識
区分:言語と教育
求められる能力↓
- 個々の学習者の特質に対するミクロな視点と、個々の学習を社会の中に位置付けるマクロな視点
- 学習活動を客観的に分析し、全体および問題の所在を把握するための基礎的知識
- 学習者のかかえる問題を解決するための教授・評価等に関する基礎的知識
区分:言語一般
求められる能力↓
- 現代日本語の音声・音韻、語彙、文法、意味、運用等に関する基礎的知識とそれらを客観的に分析する能力
- 一般言語学、対照言語学など言語の構造に関する基礎的知識
- 指導を滞りなく進めるため、話し言葉・書き言葉両面において円滑なコミュニケーションを行うための知識・能力
こうして一覧にすると、非常に幅広く、どれから手を付けて学習を進めていけば良いのかわからなくなる方も多いのではないでしょうか。
そんな時は、日本語教育能力検定試験対策講座を開いているスクールの力を借り、どこをどれだけ学習すれば試験合格に近づけるかの道筋を立ててもらうとよいかもしれません。
日本語教育能力検定試験を解説
日本語教育能力検定試験は3つの試験形式に分かれており、それぞれに特徴があります。
試験Iでは全問マークシート方式で制限時間90分、100問とかなり多くの問題が出題されます。問題の難易度はまちまちなため、簡単な問題にはあまり時間をかけず、難しいと感じた設問に対しては考え込む前に飛ばし、より多くの問題に回答するといった工夫が求められます。マークシート方式なので、飛ばして回答する場合に解答欄がズレてしまわないように注意しましょう。
試験IIではリスニング形式の問題が出題されます。音声を聴いて解答用紙(マークシート方式)に解答していきます。音声については日本語のリスニングスピードがかなり速いため、ある程度慣れておく事が大切です。試験時間30分に対し配点40点と、他の試験形式に比べ配点比率が高いため、確実に加点しておきたい試験です。
試験IIIではマークシートと記述式の問題があります。試験Iに比べより実践的な内容が問われる試験で、日本語学習者の誤りを正すための正しい論法や、日本語教師として現場で働くときの対応能力などが求められます。ちなみに試験IIIの最終問題となる記述問題に関しては、マークシート方式で得られた点数が一定の水準を満たしていない場合、採点の対象とされませんので注意が必要です。
日本語教育能力検定試験に合格するために
本質的には、日本語教育能力検定試験は知識と実務能力を備えた「日本語を教えるにふさわしい人物」かどうかを判断するテストと言えます。
人にものを教える立場の人間として、研究者のように知識量だけに偏ってもいけませんし、外国人とのコミュニケーションや教え方が上手だからと言っても、知識や理論的な後ろ盾なしには、教師として長く活躍していくことは難しいでしょう。
日本語教育能力検定試験の合格は、日本語教師になるために必要不可欠なものではありません。ただし、合格レベルの実力を身に着けておくことは、日本語教師になるために必要不可欠なことであると言えます。
日本語教育能力検定試験の合格率は例年18%から高くても22%程度と、合格へのハードルは低くありません。勉強量と質、その両方が求められるため、仕事をしながら検定試験への合格を目指す方は、いかに空いた時間を有効に活用して学習するかを求められます。
まとめ
ここまで日本語教育能力検定試験について解説してきました。試験合格は一日にしてならず、です。出題傾向を把握して効果的に学習を進め、確実に試験に合格できるように万全の対策を練っていきましょう。