目次
はじめに
日本語教師養成講座にはスクールに通って受講する通学コースと、自宅などで自ら学習し添削などのアドバイスを受ける通信教育の2種類があります。
一般的に日本語教師を目指す方の割合としては、通学コースの授業を受ける方が大多数ですが、通信教育には日本語教師養成コースだけではなく、理論的な部分の教育に特化したものや、日本語教育能力検定試験の合格を目指すものなど複数のコースが設けられています。
昨今は、通信 + 通学で、完全通学コースよりも通いやすい講座も開講されています。
こちらではそのような日本語教師養成講座の通信教育についてご紹介します。
通信制のスクールを選ぶ
日本語教師養成講座の通信講座を選ぶ場合、人によって様々な希望があると思います。
- 勉強したいけど通学する時間がない
- 時間はかかってもいいので自分のペースで理解しながら進めたい
- 近くに通学できる学校がない
- 通信制は学費が安い
実際に通信教育では上記の希望を満たすことができるでしょう。そもそも通信講座のメリットとして一番に挙げられるのは、自分の時間や学習のペースに合わせて進めていける点です。
しかも今の時代、一昔前のように学校から教材がドサっと届いて、「はい、あとは頑張ってね」「添削するからテストの回答を送ってね」といった形のものではなく、専用のWEBサイトにアクセスし、質問を行ったり受講生同士が交流できるコミュニティや、テストを自動採点してくれる環境をフル活用して学習を進めることができるようになっています。一人で机に向かい、テレビを観たい気持ちを我慢したまま孤独な戦いをすることもないのです。
さらに通学制のスクールに比べ費用が大幅に抑えられていることも魅力です。通学制は60万円程度の費用ですが、420時間カリキュラムと同様の内容を大体3分の1から5分の1の費用で受講することが可能です。
また、まとまった時間がない方も自分のペースで進められますから、早起きしたり仕事から帰宅してからの空き時間など自分のライフスタイルに合わせて柔軟に学習を進めることができるでしょう。
自宅圏内に通学できる学校がないという方にも、通信講座は最適です。そもそも日本語教師養成講座の通学制スクールは大都市圏以外には少なく、また都市圏にあってもその地域の中心都市だけにしかないというケースがほとんどです。
それだけに交通費や時間をかけて遠いスクールに通うよりも、通信教育の方が現実的な選択となり得る場合もあるでしょう。
通信教育のマイナスポイント
これまでご紹介してきたように、日本語教師養成講座の通信教育には色々なメリットがあります。しかしデメリットも存在します。通信教育のデメリットは、すなわち、講座終了後にあります。
通学制のスクールのように、420時間通信講座を修了後、修了証が付与されます。ただし、通信講座における420時間カリキュラムの修了においては、そのほとんどが求人などで除外される可能性が高いです。つまり通学制スクールでの420時間講座は認めるが、通信講座は認めません!ということです。
通信教育を修了しそのまま就職を目指す場合は、通信教育の420時間カリキュラムを認めている求人に応募せざるを得ず、その結果将来の道が狭まってしまうかもしれません。
通信教育では、日本語教師となる条件の一つ「日本語教師養成講座において420時間以上の専門教育を受けていること」を満たせないのであれば、異なるアプローチを取るしかありません。
つまり、結果として、日本語教育能力検定試験の合格を目指す方が多くなっていきます。通信教育で学んだことを活かして試験に臨むわけですが、多少なりとも検定試験対策が必要となり、その教材費用や、何より勉強時間を費やさなくてはなりませんから、日本語教師への道は少なからず遠回りとなり、更に険しさを増す可能性があります。
通信講座の救世主!!
さきほど説明したように、ほとんどの通信講座は、最終的に、検定試験合格を目指すためのプログラムといえます。
しかし国内で2校のみ、通信講座でも通学と同様の420時間コース修了証をもらえる講座が存在します(2018年8月現在)。
2019年12月現在では、5校のeラーニングコースが文化庁に認可されており、通学コースと同等の資格を取得できます。
本章では、ヒューマンアカデミー、東京中央日本語学院(TCJ)、資格の大原、アルファ国際学院、アークアカデミーの5校の中から、最も早くにeラーニングコースに着手された2校を取り上げてみたいと思います。
東京中央日本語学院(TCJ)の「eラーニング420コース」
2018年7月にスタートした、東京中央日本語学院の「eラーニング420コース」。文化庁の認可も通っている国内5校の内の一つです。
養成講座自体は開講31年ということもあり、質はかなり高いと評判です。
通信講座といえども実技科目は通学が必要なようなので、WEBだけで完結というわけにはいきません。
ただ、土曜週1通学の場合、半年間で修了できるそうなので、ビジネスマンや学生でも資格取得が可能です。
資格の大原の「420時間総合コース(理論編WEB)」
もうひとつは、資格の大原の「420時間総合コース(理論編WEB)」です。様々な資格取得スクールを運営している「資格の大原」ですが、通信での日本語教師養成講座も開講しています。
上の「東京中央日本語学院(TCJ)」と共に、現在、文化庁認可が通っている通信講座5校の内の1校です。
ただ、こちらも実技授業は通学が必要です。まあ普通に考えて、実技(模擬授業など)を通信で受講するというのはあまり現実的ではない気がするので、きちんと資格を取得したいのであれば、この点は受け入れるしかないかもしれません。
両者比較
価格は「東京中央日本語学院(TCJ)」が 484,000円(すべて込み)、「資格の大原」が 493,400円(すべて込み)ですが、前者は3万円オフになるクーポン券が使えるようです。後者は大学生の場合に2万円ほど安くなります。
この上で、実際に両者の資料を取り寄せてみましたが、「受講期間が3年間」「再受講が何度でも可能」「WEBサービスが充実」している東京中央日本語学院(TCJ)の方によりお得感を感じました。
ただ、どちらも評判の良いスクールです。
強引な営業をしてくるスクールが何校かある中、そのようなことは一切ありませんでした。
通信講座いろいろ
他の通信講座も紹介していきます。いずれもWEB講座の修了資格をもらえますが、法務省告示校では働くことができない資格となりますので、日本語教育能力検定試験の合格が必須と考えた方が無難です。
ヒューマンアカデミーの「日本語教師養成総合講座」
まずはヒューマンアカデミーの「日本語教師養成総合講座」。こちらは講師の授業風景のDVDを利用した講座で、その数19巻とボリューム大。DVDなので何度も繰り返し見ることができるため、理解するまでひたすら反復学習ができます。DVDプレイヤーなどがあれば外出先でも学習を進めることができます。
費用は132,000円、標準学習期間は6か月ですが延長可能となっています。通学生の校舎で行われている各種セミナーに特別価格で参加できるなどの優遇制度もあり、通信教育で検定試験合格をめざすコースです。
アルクの「NAFL日本語教師養成プログラム」
次はアルクの「NAFL日本語教師養成プログラム」です。出版社のアルクが展開する語学通信教育の一つで、受講者が多く、日本語教師教育能力検定試験にも数多くの合格者を出している人気の通信講座です。24冊のテキストが検定試験の出題範囲をすべてカバーしているため、検定試験の合格はかなり高い確率で手にすることがでるはずです。CD7枚、DVD1枚が付き、費用は98,700円となっています。標準学習期間は12か月で、短期終了も可能です。ただし延長する場合は別途費用が発生します。
アークアカデミーの「日本語教師養成WEB講座」
続いてのアークアカデミーの「日本語教師養成WEB講座」は、通学講座で行われている420時間総合コースの内容を、そのままインターネット経由で受講できる通信講座です。ネットを利用できるので、自宅でも外出先でも場所を選ばず学習できます。費用は160,000円、標準学習期間は365日(映像視聴の有効期間)となっています。
千駄ヶ谷日本語教育研究所の「e-ラーニングコース」
千駄ヶ谷日本語教育研究所の「e-ラーニングコース」は、パソコンやタブレットを利用して学ぶことのできるコースとなっています。このコースは法務省告示校以外での日本語教育を行っている機関で教えたい人や、日本語教育能力検定試験の合格を目指す方向けとなっています。
ちなみに法務省告示校以外とは、「留学」以外の在留資格をも持っている学習者を対象にしているスクールを指します。海外で日本語教育に携わる場合も法務省の規定からは外れます。費用は220,000円、WEB学習とスクーリングを1カ月で4~5日間行います。標準学習期間は9カ月で、学習ペースは変更可能なようです。
まとめ
日本語教師構成講座通信教育の実態について説明してきました。通信講座には学習ペースを柔軟に調整できるという利便性がある反面、通学コースとは異なり、420時間コース修了を認められない例があります。
日本語教師として教壇に立つまでに、どんな道筋で、どれほどの速度で歩んで行きたいのかをしっかり見据えた上で、通学と通信のどちらがより自分に合っているかを見極めましょう。